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 ムートの姿を認めた小人族の女性がこちらへ歩きながら、叫んでいる。 「お前のせいだ。お前のせいなんだよ。魔族を、ルシヴィル王を倒そうなんて考えるから、この森で修行なんてするから! だから魔族はダークエルフにこの森を攻めさせたんだ。ふざけんじゃないよ!」  そうだ、そうだ、と後ろで他の小人族たちも追随する。  ジイは心配してムートを見たが、その姿はまるで今日のことを予見していたかのように落ち着いており、しっかりとした瞳でその凄惨な光景を見回していた。 「ムートお! ジイー!」  遠くから駆けてくる小人族がいる。近くに来る前からそれがコビィであることは、人好きのする声で判別できていた。 「申し訳ない。いや、本当に申し訳ないのお。お前たちが悪くないことはみんなわかっているはずなんじゃ。しかし、こんな状況になってしまって、誰かを責めなければ自分自身を保てないのじゃろう」  申し訳ない――と、何度も繰り返してから、実に言いづらそうに切り出す。 「この森にはしばらくは来ないでほしいんじゃ。お前たちは悪くないんじゃが、またダークエルフにこの森を攻め込まれると、わっしら小人族は住む場所を失ってしまうどころか、多くの命が奪われてしまうだろう。今頃行われているであろうルシヴィル王の演説を聞きに行った小人族が多かったのが不幸中の幸いじゃ。民衆のために修行しているムートを追い出すのは心苦しいが、この老いぼれからのお願い、聞いてくれんかの」
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