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「――承知した。迷惑をかけて、すまなかった」  遠くにいる小人族にも聞こえるように大きな声を出し、しっかりと頭を下げた。  そしてムートは背を向け、一度も振り返ることなく歩いた。ジイはひと言も発することなく、ムートの隣を同じ速度で進む。  ムートは付いてこようとしたカリノを森に留まらせ、この森が以前の姿を取り戻し、小人族が落ち着いた頃にまた会おうと約束した。  翌朝、家の中で小さく木刀を振っていたムートの元へ、昨日は眠れなかったのか目の下に大きなクマが浮かびいつもに増して目の細くなったジイが訪ねてきた。 「まだムートには時期尚早だとは思うんだが……。言おうか言うまいか、こうして顔をつきあわせた今もなお悩んでおる」 「ジイ、えらく大きなひとり言だね。言うか言わぬかはジイが決めることだが、僕は気になる。無理にとは言わないがぜひ聞かせてほしい」 「では……話す前に誓ってほしい。必ず負けはしないと。そう誓ってくれるのなら、(わし)も覚悟を決めよう」  ムートは誓った。何に対してかもわからぬのに、一つの迷いもなく誓った。ジイは話すことをためらってはいるが、その様子から、避けては通れない、必ず成し遂げなければいけない試練が見えた気がした。  ジイは大切な何かを諦めた時のように目を伏せ、決心した呼吸が空気を震わせた。
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