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「本当はもう少し時が経ってからと思っていたんだが……。思ったよりも早く、ルシヴィルが動き出してしまったようだから……仕方がない。ムートも話には聞いたことがあるだろう……。北にある大きな山……エルフが多く住むあの山のある話を……」
ジイはいつの間にか前のようなゆっくりとした話し方に戻っていた。
「あの山の頂上に『神の小指』があるって話だろう? まさかあんなおとぎ話を真に受けているなんて柄にもないだろう、ジイ」
『神の小指』とはランサに伝わる神話である。北の山の頂に『神の小指』と呼ばれる、神の手をかたどったオブジェがあり、通常は拳が握られた状態になっている。
その『神の小指』の前で強い決心を誓うと、徐に小指が立ち上がるという。
その小指に自分の小指を絡ませて――いわゆる、指切りげんまんである――望みを声に出すと叶うという。
しかし、そう簡単なものではない。
「……その望みが大きければ大きいほど……代償も、大きくなくては……ならない」
「代償……? 代償とは何だ? そのような話、言い伝えにはなかったぞ」
「物か、思いか……命か……。望みを叶えたいのなら……犠牲が必要になる。望みが大きければ、その分大きな犠牲を……払わなければならない……等価交換、と言えば分かりやすいだろう」
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