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 ランサの平和と等価とはどのようなものがあるのだろうか。ムートには見当もつかない。しかしそれをジイに尋ねるのも野暮な気がして、口をつぐんだ。  そんなムートの心情を察したのか、ジイが発言する。 「ムートよ。儂もな……わからんのじゃよ。『神の小指』を見たのはたったの一度きりで、しかも……ずっと拳を握りしめた状態であった。だから、わからんのじゃよ……。本当に望みは叶うのか……。それにはどれほどの代償が必要なのか……。なに一つ、わからんのじゃよ」  こんなに弱気なジイを初めて見た。根拠のない言い伝えにすがりつかなければならないほど、この惑星は危機に瀕しているというのか。 ――ならば。 「ジイ。何も心配はいらない。ジイはその時が来るのをただ待っていればよい」  言うと同時にムートは北の山へ向かった。  神のご加護があらんことを――と声のない言葉で遠くなった背中を押した。  ムート十九歳、今にも雨が降りそうな湿度の高い夕刻であった。
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