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 子煩悩といえるほどに、すべての子を可愛がった。しかも、差別や区別なく、平等に、である。  ムートが南の海へ遊びに向かうときも、東の砂漠へ探検に向かうときも、そこに住む自分の子たちの自慢をし、訪ねることを勧めていた。それゆえ、今回に限ってネットのことを何も話さなかったことは不可解である。  ネットは目玉を左斜め上に向け、時計回りにゆっくりと一周させた。  まだあごひげを撫で続けている。 「……少し考えてみたんだけど、父ちゃんが俺のことを話さなかったのは二つの理由があると思うんだ。一つはムートの邪魔にならないようにしたかったんだと思うんだ。遊びに行くわけじゃないからね。できるだけ寄り道はさせたくなかったんだよ。そしてもう一つは――」 ――運命を神に託したんだよ、きっと。  それはムートにとって意外な言葉であった。頭の良い竜人族が何らかの学問には頼らず、運命や神などという不確かな存在に未来を託すのか――そんなムートの心をネットは悟った。 「……そんな世の中になってしまったんだよ。魔王ルシヴィルの誕生からすべてがおかしくなってしまった。表面上は争いがそう増えているようには見えないけどね、それは確実に増えているんだ。しかも一方的な暴力によって。先の北西の森の事件、あれもどうせルシヴィルの所業だろうよ」 「あの事件のせいで、僕は北西の森にしばらく行けなくなってしまった」
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