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「どうもルシヴィルの狙いはそこにある気がしてならないんだよな」
ここでようやくあごひげを撫でる動作を止めた。
「ルシヴィルの真の狙いは分裂や孤立させることじゃないかなと俺は考えたんだ。そのほうがよっぽど支配しやすくなるからな。とくに人族は孤独に弱いだろう? じわじわ追い詰めて、懐柔する気かもしれない。おぉなんと恐ろしい」
重い空気を変えようと思ったのか、最後のひと言だけ芝居じみた、少しふざけた言い方だったが、ムートは笑える心境にはなれなかった。
「……懐かしい顔についつい話し込んでしまった。僕はそろそろ行かなくてはならぬ。久しぶりに会えて楽しかったよ、ネット。また会おう」
ムートが背を向けた瞬間――
「――待て待て待て待て、まあ待て。」
ムートの左肩にネットが手を伸ばす。
「言っただろう。父ちゃんは神に運命を託したんだ」
「だから『神の小指』まで急がなければ――」
「違うよムート。いや、違わないんだけど……。俺も付いていくんだって」
「なぜ付いてくるのだ。危険だ、止めておけ」
「いや、だからそれが父ちゃんの託した運命なんだって」
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