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 ムートの両親が旅行から帰ってくるまでのひと月ほどの間で、人族の死者は飛躍的に増えていた。  魔族とすれ違いざまに肩が触れてしまった者、歩く速度が遅く後ろにいる魔族のペースを乱した者、ルシヴィルの昼寝中に城の近くで鬼ごっこをして遊んでいた子どもたち……そのすべては弓矢や銃の流れ矢、流れ弾によるものとして処理された。  しかし、民衆は知っている。殺意を持って照準を合わせていたことを。  怯えた人族は極力外は出歩かないよう努めた。どうしても外出が必要なときは、夜中に暗い色の服を着用し、街灯のない暗い道を選んだ。  そんなときにムートの両親は、楽しい旅行からランサに帰ってきてしまった。街を歩く人族の異様な少なさに違和感を覚えつつも、旅行の余韻がまだ残っており、浮かれ気分であった。  人族が白昼堂々と街を歩くのが最近では珍しいため、すぐに街中に噂が広まった。そして、ベランダで街の様子を眺めていたルシヴィルの目にもそれは届いてしまった。 「誰かおらぬか! 誰かおらぬか!」  城の中へ戻りながら、声を上げた。 「どうされましたか!?」  シュタルクが一番に駆けつける。あとからぞろぞろとルシヴィルに仕えている者たちが集まった。 「帰ってきたぞ。奴の両親が帰ってきたぞ。いよいよだ。いよいよ、奴を地獄へ突き落とすときが来た」
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