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 ランサに古くから受け継がれている聖典によれば、アダムはもともと地球人であり、地球では天文関係の仕事に就いていた。偶然この小さな惑星――ランサのことである――を発見し、その頃対人関係で悩みを抱えていたアダムは孤独を望み、毎夜この惑星に思いを馳せた。それを憐れんだランサの創造主――いわゆる、神である――がアダムをランサへと(いざな)った。そこで同じような境遇のエヴァと出会い、二人はまるでそれがずっと前から決まっていたことのように恋に落ち、人族は現在のような繁栄となったらしい。他種族に関してはランサの創造主がアダムとエヴァを労うための贈りものとして造られたと記載されている。  話を現在に戻そう。  ルシヴィルの雄叫びに崩れ落ちたのは人族、エルフ、小人族。  歓喜したのは魔族、ダークエルフ、巨人族である。  竜人族は雄叫びが聞こえなかったかのようにすました顔でルシヴィルを見据えている。  ランサの二十四代目の王、デビューは四日前に何者かに腹を裂かれて亡くなった。  ランサはデビューが制定した法――どの種族や性別であってもいかなる差別をすることを禁ずる『究極平等法』を適用する唯一の惑星である。  この『究極平等法』には王を選ぶ際の規則がある。それは現王が王座を退いたとき、人族、魔族、エルフ、ダークエルフ、竜人族、小人族、巨人族の順で次の王を選ぶということだ。
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