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 肺いっぱいに息を吸い込み、一層大きな声を出す。 「――それに、魔族が王になれば、全種族が平等になるような仕事をするとは思えぬ。魔族だけが得をする惑星になってしまうのではないか。祖父の、全種族が平等に暮らせるように――という思いを叶えるために、魔王の誕生は阻止しなければならない」  ルシヴィルは一瞬、眉間にしわを寄せた。 「こうして大勢の民衆の前に立ち、自分は人族の代表だと言わんばかりの大人びた行動は評価しよう。しかし、やはりお前はまだ子どもだ。真の平等というものを理解してはおらぬ。お前に教えてやろう。真の平等と言うのは――」  言いかけたとき、ルシヴィルのそばに立っていた護衛らしき魔族三人のうち、ルシヴィルの右にいた、中でも屈強そうな肉体を持つ男が耳打ちをする。  ほう、それはいい――ルシヴィルは唇を歪ませムートに告げる。 「たしかにお前の言うとおりだ。『究極平等法』には欠陥がある。真の平等とはいえないだろう。そこで、だ。王には法を変える権利があるだろう」  崩れ落ちた民衆は、嫌な予感に体を硬直させた。 「『究極平等法』は今をもって効力を持たない。これからは魔族のみが王を継ぐ権利を与えられ、魔族に不利益をもたらす者および、この法に異議を申し立てる者を死刑に処す『魔族特別法』を施行する」  ムートは小さな拳をわなわなと震わせながら握りしめ、そして叫んだ。 「そのような暴挙、神も許さぬ」  しかしルシヴィルの耳には、魔族の歓喜の声以外は何も聞こえなかった。
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