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「……ジイ! 一体何があったのだ? 一回り、いや、二回りは体が大きくなっているじゃないか」  竜人族の中では一番体が大きいジイだが、さらに(たくま)しくなっていた。 「なに……少し脱皮をしただけだよ」  以前と変わらぬ話し方にムートは安堵した。  ただ脱皮をしただけでこれほどまでに大きくなることはあり得ないと、人族であるムートが理解できるほどにジイは変わっていた。 「……ついて来なさい」  ゆっくりと歩を進めるその大きな背中から、何かを感じ取らなければいけない、そんな予感がした。 「ここで……少し待ってなさい」  そこはランサの北西に位置する、主に小人族が住む森である。  大きな赤樫の切り株に腰掛け、雲の流れを見ながら今夜の天気を予測する。今日もそうだが、ここ最近、重い天気が続いている。  ムートは、ランサの古い言い伝えがあったことを朧気(おぼろげ)に思い出していた。 ――心悪しき者が王の座についたとき、悪い『気』を宇宙へ放出し、他の惑星に迷惑をかけてしまわないよう、その惑星は雲の盾に覆われる――  十五分ほど経った頃だろうか。遠くにジイの姿を確認した。青い布に包まれた一・五メートルほどの細長い何かを体の前で斜めに抱えている。左には小人族の鍛冶屋コビィが一緒だった。 「ムート! 久しぶりだあなあ!」 遠くからムートの姿を認めると、そう叫びながら駆けてきた。
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