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「また大きくなったなあ。お前さんが羨ましいわい。わっしら小人族は生まれたときからほとんど背が伸びん。自分と同じくらいの子どもを産むんじゃけぇ、小人族の女性には本当に頭が下がるわい」
少し背伸びををしながら、愛嬌のある笑顔を浮かべている。
コビィは平均寿命の九百歳を越えるお爺さんらしく、記憶力の低下がみられる。会う度にそう話しかけてくるのである。
「コビィはまだまだ、元気だな……。こんなに速く走れるなんて……とても九百歳代には思えない」
ゆっくりと追いついたとき、ジイはコビィをそう褒めた。社交辞令でなく、本心から思っているような口ぶりだった。
「ねえ、ジイ。それは?」
ムートは細長いそれを指差した。
「だいぶ遅くなってしまったが……ムートへのバースデープレゼントだよ」
開けてごらん――。
中身はムートの手には大きく、持ち上げるのがやっとなほど重量のある、柄にかけて細くなった棍棒のような形をした木刀であった。
「ムートがつい先ほどまで座っていたその赤樫で作ったんじゃ」
コビィは自慢げに体を反らせ、可視できそうなほどの量の空気を鼻から一気に放出させた。
「すぐに……軽く持ち上げられるように……なる」
ジイはまだ息が切れているのか、いつもに増してゆっくりと発言した。
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