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その日から北西の森で鍛錬の日々が始まった。
今までの温厚なジイからは想像もつかないほどに厳しい鍛錬であった。
早朝から太陽が沈むまで、昼食の間を除き、ほとんど休み無く木刀を振り続けた。何度か気を失い倒れたが、周りでその様子を見ていた数人の小人族が、あらかじめ用意していたのであろうバケツの水を、ムートの顔に勢いよく浴びせてくれた。
ルシヴィルに勝ちたいのだろう――。
前王、デビュー様が築いたような平和な惑星を取り戻したいのだろう――。
思いを強く持て! ムートよ。このジイが老い先短い人生をかけ、必ずお前を誰よりも強い男に育ててみせる――。
自分の役目を見つけたからであろうか。ジイの眼光は輝きを取り戻し、息も切れ切れでゆっくりと話していた面影すら今はない。若々しく、一流の戦士に勝るとも劣らない姿である。
鍛錬を続け、ジイまではいかないものの人族の中では上位の逞しい肉体を手に入れていたある日、若い小人族が、ムートに話しかけてきた。
「ムートさん、でしたよね? ボクはカリノといいます。毎日何時間も必死に木刀を振っておりますが、そんなに強くなってどうなさるおつもりですか」
「ルシヴィルに王の座を退いてもらうのだ」
若い小人族は驚きのあまり一時硬直し、息を短く吸った。
「つまり――ルシヴィル王を倒す、とおっしゃるのですか?」
まぶたを閉じ、ゆっくりと首を横に振る。
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