(番外3)初恋のその先

6/10
前へ
/121ページ
次へ
 いよいよ格好悪さも局地だが、ここまでくればもう開き直るしかない。それに目の前の圭一は少し照れくさそうでいて、一方でやり込められる和志の反応を楽しんでいるような……要するに、満更でもない雰囲気だ。 「圭ちゃん」  名前を呼んで、目の前にある首筋に甘えるように鼻先を擦り付ける。圭一の首筋はひどく熱くて、ほのかにボディソープの匂いがした。きっと圭一だって、まったく平静だったわけではないのだ。ここに来るときも、来てからも、抱き合ってからも。 「いい匂いがする、圭ちゃん」  犬みたいにくんくんと首筋を嗅いでから、舌を出してぺろりと舐める。圭一は小さく息を飲んで体を震わせると小さな声で「くすぐったい」と言った。いくら鈍い和志でもそれが拒否の言葉でないことはわかる程度に、声色は甘い。  圭一の首筋が好きだ。若木のようにしなやかでさらさらとしているのに、触れていると熱くなりしっとりと湿ってくる。舌を這わせると震えて、軽く歯を立てれば圭一は身悶えしながら和志の頭をぎゅっと抱きかかえてくる。あとは欲望に任せ流だけ。唇を上に滑らせれば柔らかな耳たぶがあるし、下に向ければくっきりと浮いた鎖骨、さらにその下には——。  抱き合う回数が増えるたびに、少しずつ行為は深くなっていった。いつだって圭一は「おまえは夢中になると加減がわからなくなるから、これ以上は怖いんだよ」とぶつくさ言っているが、そのあたりは和志にも自覚はあるし、抑えなければいけないとわかってもいる。だが、圭一の肌は何か不思議なものでできているのではないかと疑いたくなるほどいい匂いがして、いとも簡単に和志から理性を奪ってしまうのだ。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

440人が本棚に入れています
本棚に追加