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先端を押し当てると、思ったより抵抗がある。本当に入るんだろうか、と一瞬頭をよぎる。だってあんなに小さい穴。確かに指は入ったし、一度は玩具を試したこともあるけれど——圭一が嫌がり二度目はなかった——巨根自慢でも何でもない自分のそこが、本当にここに侵入できるのか。突然生じた迷いに和志は動きを止めるが、ここでも背中を押してくれるのは圭一だった。
「いいから早くっ、大丈夫だって」
その言葉には強がりも多分に含まれているのだと思う。それでも、欲しがる気持ちに嘘がない証拠に、圭一の腰は微かに揺れていた。
言葉に応えるようにぐっと腰を押し付けると、先端が肉に埋まる感覚があった。ひどくきついのは最初。腕の中の圭一の体にもぐっと力がこもった。力を抜かせるにはどうするんだったっけ、と混乱する頭で記憶を手繰り、そのまま身を乗り出してキスをした。
「ん、っ」
唇が触れた瞬間、圭一は和志にこれまでにないくらいの強さですがりついてきた。まるでこの不安からも痛みからも救ってくれるのが世界でただ一人和志しかいないかのように強い力でしがみついて、自ら和志の唇を、舌を貪った。
「……は、あっ、圭ちゃん」
名前を呼びながら、キスをしながら、手を圭一の股間に伸ばす。少し萎えそうになっているそれをやわやわと握りさすり、先端をくすぐってやると手の中で再び硬さを取り戻すと同時に、きつく和志を締め付けている場所がわずかに緩んだ。
「ごめん、痛い? 圭ちゃん、痛いよね……」
そう繰り返しながら、それでも高まりきった欲情はもう抑えることなどできない。ごりごりと腰を進め、やがて和志は熱く猛った場所のすべてを圭一の中に収めた。
「バカ」と、ようやく唇を離した圭一が呟く。
「おまえだって痛いだろ、こんなの」
「……うん」
図星だ。思った以上の締め付けに、和志も痛みを感じている。圭一だって和志が身動きするたびに眉根を寄せて痛みをこらえる顔をする。最初から動画に出てくるカップルみたいに上手くいくとは思っていなかったが、こんなに痛いものだとも思っていなかった。
でも——熱くてひりひりと痛む場所、そこで今確かに和志は圭一とつながっているのだ。
「痛いけど、すっごい幸せ……」
和志はそう言って圭一の額に自分の額をくっつけた。気を抜いたら涙がこぼれそうなくらい嬉しくて、感動しているけれど、初体験で泣いたら死ぬまで圭一にバカにしてからかわれ続けるに決まっているから何とかこらえようとしてぎゅっと顔に力を入れる。その様子を見て圭一が吹き出した。
「……っ、何変な顔してるんだよ」
変な顔だなんてひどい言い様だ。でも今何か言い返せば頑張ってこらえている涙が出てきてしまうに違いない。だから和志は黙って圭一をきつく抱きしめた。もちろん心の底では、圭一が今和志が泣くのを我慢していることくらいお見通しなのだとわかっているが、それでも今くらいは感傷に浸っていたい。
長い初恋のその先。やっとたどり着いたこの瞬間を噛みしめ焼き付けて、ずっと忘れずにいられるように。
(終)
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