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手洗いうがいをしてからそれぞれの部屋で着替えを済ませ、キッチンに集合した美寧と怜。
怜は光沢のあるグレーの薄いストライプの入ったエプロンを、美寧は上が花柄、下はマスタード色のツートンカラーのエプロンを着けている。
美寧のエプロンは、この前のデートの時に怜がいつの間にか買ってくれていたものだ。
フレアスカートのようにギャザーの入った裾、腰の前で結んだマスタードの共布リボンがアクセントになっていて、とても可愛らしい。
そうしてキッチンで揃ってエプロンを着けた二人は、丸テーブルの上に置いてある袋を覗き込んでいた。
「またたくさん頂いちゃったね、銀杏」
「そうですね。少しマスターのところにお裾分けしましょうか」
「あっ、そうだね。それがいいね」
怜の研究室の竹下から貰った分は、昨日の夕飯で食べ終わっているけれど、追加で貰った分は二人で食べるには少し多すぎるように見えた。
「ミネは何が食べたいですか?」
「私?う~ん、そうだなぁ……」
銀杏を使う料理なんてそんなに知らない。
「炒ってお塩で食べるのも美味しかったし、がんもは、昨日食べたし……」
美寧は「うーん」と少し考えてから、突然「あっ!」と何かを閃いたように言った。
「茶碗蒸しがいい!」
「茶碗蒸しですか?」
「うん、銀杏入りの!それとおうどんが入ったやつ!」
「ああ。“小田巻蒸し”ですね」
「そう、それ!」
「前にナギが来た時に話に出ましたよね」
藤波家を訪れた高柳は、怜の大学時代からの友人である高柳が藤波家を訪れたのは先月。ここでたこ焼きパーティをした記憶はまだ新しい。
その時に、高柳が関西の祖父からたこ焼き作りを教わったと聞いた。それから話の流れでご当地の食べ物の話になり、高柳が、あちらでは茶碗蒸しにうどんを入れた“小田巻蒸し”なるものがあるのだと教えてくれた。
美寧はそのことを聞いてから、ひそかに食べてみたいと思っていたのだ。
「うどん……そう言えば、ありましたね」
冷蔵庫を前にしばらく考え込んでいた怜は、「分かりました。今日は小田巻蒸しにしましょう」と言った。
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