第四話【ふわふわがんもと変わり茶碗蒸し】再会は突然に

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[3] 手洗いうがいをしてからそれぞれの部屋で着替えを済ませ、キッチンに集合した美寧と怜。 怜は光沢のあるグレーの薄いストライプの入ったエプロンを、美寧は上が花柄、下はマスタード色のツートンカラーのエプロンを着けている。 美寧のエプロンは、この前のデートの時に怜がいつの間にか買ってくれていたものだ。 フレアスカートのようにギャザーの入った裾、腰の前で結んだマスタードの共布リボンがアクセントになっていて、とても可愛らしい。 そうしてキッチンで揃ってエプロンを着けた二人は、丸テーブルの上に置いてある袋を覗き込んでいた。 「またたくさん頂いちゃったね、銀杏」 「そうですね。少しマスターのところにお裾分けしましょうか」 「あっ、そうだね。それがいいね」 怜の研究室の竹下から貰った分は、昨日の夕飯で食べ終わっているけれど、追加で貰った分は二人で食べるには少し多すぎるように見えた。 「ミネは何が食べたいですか?」 「私?う~ん、そうだなぁ……」 銀杏を使う料理なんてそんなに知らない。 「炒ってお塩で食べるのも美味しかったし、は、昨日食べたし……」 美寧は「うーん」と少し考えてから、突然「あっ!」と何かを閃いたように言った。 「茶碗蒸しがいい!」 「茶碗蒸しですか?」 「うん、銀杏入りの!それとが入ったやつ!」 「ああ。“小田巻蒸し”ですね」 「そう、それ!」 「前にナギが来た時に話に出ましたよね」 藤波家を訪れた高柳は、怜の大学時代からの友人である高柳が藤波家を訪れたのは先月。ここでたこ焼きパーティをした記憶はまだ新しい。 その時に、高柳が関西の祖父からたこ焼き作りを教わったと聞いた。それから話の流れでご当地の食べ物の話になり、高柳が、あちらでは茶碗蒸しにうどんを入れた“小田巻蒸し”なるものがあるのだと教えてくれた。 美寧はそのことを聞いてから、ひそかに食べてみたいと思っていたのだ。 「うどん……そう言えば、ありましたね」 冷蔵庫を前にしばらく考え込んでいた怜は、「分かりました。今日は小田巻蒸しにしましょう」と言った。
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