恋慕

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木漏れ夕日の差し込む森の中。 少年と少女は二人、向かい合い、手を取り合っている。 暖かな光に照らされたお互いの顔を見て、何やら気恥しそうに笑っている。 二人とも、心做しか頬の色が赤く染まって見えた。 一体どんな会話をしているのだろう。ここからでは分からないのが、とてももどかしい。 木々は時折吹く風に身を任せ、揺れている。まるで二人を優しく見守っているように思える。 よく見れば少女はドレスのような服を着ていた。 対して少年の衣服はみすぼらしい。 どうやら身分違いの恋をしてしまったようだ。それも、お互いがお互いを想い合っている。 しかし、恐らくこの恋は実を結ばないのだろう。 よく見ると、二人の笑みの中に何処か寂しげな色があるようにも思えた。 作者不明 「恋慕」 せめて、この二人の行く末が幸せである事を願い、傍観者であった私は次の絵を見るべく二人のもとを離れるのであった。
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