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元ヤンキー溺愛系男子
「あの人、ヤンキーなんだって」
「嘘。そんなの昔のことでしょ。ヤンキーなんていないでしょ」
近頃、ヤンキーなんて言葉、あまり聞かなくなった。だから、もうヤンキーなんていないもんだと思っていた。
噂は噂を呼ぶ。
「千花さ。あの噂してる?」
私は机に頬杖をついて、ファション誌を読んでいた。
横丘高校2年に通う広瀬千花(ひろせちか)。
高校は普通科で、特に専門を特化にした授業はないが、高校生が学べる範囲で授業展開している。
至って、普通の高校生。
今は、お昼休みで中学時代からの友達・咲(さき)と話をしていた。
咲は私に話しかけてきた。
「噂?」
私は、目だけ咲に向けて反応する。
「隣のクラスの西原凌(にしはらりょう)。ヤンキーで目つきが悪く、学年中から怖がられてる。今じゃ稀に見ないヤンキーなんだよ。しかも、中学生の時、隣町のヤンキー達を一人で倒したって」
咲は語りながら、ビシッと指をさして、私に言ってきた後、携帯を制服のポケットから出して弄っていた。
咲の言う通り。
今や、ヤンキーなんているのはごく少数。
いるとしたら、隣の男子高校しかいない。
だが、ヤンキー達を一人でやるほど、強いのか。
「ほんとにヤンキーなんていんの」
私は咲の目を見て、冷めた声で言う。
「噂だけどね。金髪で学年中に怖がられてるなら、ヤンキーなんだって言ってる」
咲は携帯を机に置き、私に真っ直ぐ目を見て、言ってくる。
金髪で怖がられてるからって。
ヤンキーなのか?
疑問に思いながらも、咲の話に耳を傾ける。
「…そうなんだ。どういう人なんだろうね」
私はペラペラと雑誌をめくりながら、返答をする。
「…ねぇ。それより、千花いいの?あそこのドア付近にいつものあれいるけど」
ドア付近にいる集団に咲は目を向けて、指を指していた。
私は後ろを振り返り、ドア付近にいるあれを見つめる。
あれとは、私と話したい人達がわんさか集まっているのだ。だけど、ただ単に話したいだけじゃない。
私に怒られる為にわざわざお昼時間に来ている。
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