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「あっ」
「おっ、どうした?思いついた?」
「えっ、うん……でもなんか迅のと比べるとちょっとあれかなって」
「なんだよ、言ってみてくれよ。気になるじゃん」
「うん……えっと、ね」
「おう」
何度も見てきた、本に目線を落とす迅の姿。蒼は本は読んでも迅ほどには読まず人並み程度で、暇な時には読むんだと言っている迅の中にどんな世界が広がっているのか、気になったことがあった。あるいは、それは、隣で静かに本に集中する迅がどんなことを考えたり思ったりしながら読んでいるのか、気になっただけかもしれなくて。
だから、そんな迅の気持ちのほんの端っこでもしれたらいいな、なんて。
「あの、…………誰かの考えが分かったらいいな、なんて」
「あーなるほどなぁ。俺もあるわ、そういう時。ほら、古典のあの先生いるだろ?古典の成績よくないから挨拶されるとちょっと腰が引けるっつーか……罪悪感?とも違うしな。どんな気持ちで挨拶してんのかなって思うことはあるな」
ま、そんな深く考えてないよな、と苦笑する迅。
「あーでもそう考えると俺遅刻しない能力じゃなくて古典ができる能力がいいな、やっぱ。あの先生に手間かけさせたりしなくなるし」
「…………もう、迅、そこは勉強するトコでしょ?」
「いや、俺はむしろ勉強して分かるヤツの気持ちが分からん」
変なこと、言っちゃったかな。
蒼の欲しい超能力の話を迅はすぐにやめたから、不快な思いをさせただろうか、と綺麗に閉じた両足のふとももの上できゅ、と手を握る。そうしていると、肩が強張って蒼の姿は小さくなった。
ブブ、とポケットに入れていたスマートフォンのバイブの音で突然途切れた会話から蒼は逃れることができた。自然な風な動きを装って取り出したスマートフォンの画面を見ると、バイブ音はSNSの通知を告げるものだったようだ。通知画面に表示された文字をすぐには理解できなくて、通知画面をタップして詳細な内容を確認した。
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