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『おーーい‼︎ ジョシュー‼︎』
呼ぶと頭を下げていたジョシュがびくりと反応し、反射的にこっちを見上げる。
『ありがとう!』
手を振ると、ジョシュはにっこり笑って、隣にいる兵士をつつく。兵士が青ざめた表情でこちらを見あげ、焦ったように再び頭を下げた。あれがジョシュの彼氏か。今度ダブルデート頼んでみよう。
角竜はゆっくりと前進し始めた。
見慣れた王都の街並みが、いつもと違って見える。びっしりと並んだ人々が王子に歓声を送ってくれる。俺に対しては一応ブーイングはなさそうだ。あっても気にしないけど。
皆に手を振りながらパレードは進む。緑水湖近くまで一直線に進んで、そこから王都を一周するみたいだ。歓声をくれる人々にも警備している兵士達にも感謝の気持ちでいっぱいになった。
『ルーシェン、私もいい王太子妃を目指して頑張ります』
いつかルーシェンがいい国王になりたいと言っていた気持ちが今なら少し分かる。
「俺が道を踏み外しそうな時は隣で諫めてくれるか?」
『努力します』
俺はルーシェンが好きだから、もしかしたらルーシェンと一緒に道を踏み外してしまうかもしれないけど。その時はフィオネさんや如月や、飛行部隊のみんなに頑張ってもらおう。
予定よりスタート時間が遅れたから、パレードが終わらないうちに、日が沈んで夜になった。
角竜は気にすることなく同じペースで進む。人々も全然帰る様子がない。
日没後は魔法の灯りがともるから、角竜も道もキラキラ輝いている。
特に緑水湖の周りを進む時は綺麗だった。緑水湖は宇宙みたいだし、橋は魔法で光っているし、たくさんの船が灯りをつけて緑水湖に浮かんでいる。あの中には俺を助けてくれた二人がいて、今頃結婚の誓いをしているだろうな。
王宮に帰る途中で、夜空に花火が打ち上がった。
観客がどよめく。
俺も驚いた。この世界には花火はないと思っていた。でも実際に色とりどりの花火が夜空を埋めていく。
『ルーシェン、花火が!』
「あれは、異世界担当課の皆からシュウヘイへのプレゼントだそうだ」
『本当……ですか?』
「本物を参考に魔法でそっくりに作ったらしいが、本物もこんな感じなのか?」
『すごく似ています』
よく聞くと、遅れて響くドンという音が花火よりずっと小さい。そして決定的に違うのは文字の花火があるという所だ。
日本語で書かれた
(みさき君、結婚おめでとう)
という文字を夜空に見た時には涙が出た。
「シュウヘイ、泣いているのか?」
『嬉しいんです』
「そうか」
ルーシェンが涙を拭ってくれる。
『すごく幸せです』
「俺の方が幸せだ。結婚してくれてありがとう」
ルーシェンと抱き合って、見つめ合って、笑いながらキスをする。
この景色を俺はきっと一生忘れないだろう。
花火はまだ続いている。人々は帰らずに、祭りのように歓声を上げ、王都は光り輝いていた。
おわり
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