顔も名前も知らないともだち

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 昼休み。  一度ログアウトして家族で昼食を摂る人もいるが、ユカリはログインしたままキッチンに向かった。レンジでチンしたランチプレートを持って戻るやいなやアバターを操り、三年一組の教室へ。中を見回すと、目立つ金髪のアバターが目に止まった。 ユウジ:もっさん! 山本:お、ユウジ。今からお昼ー? ユウジ:うん。よかったら一緒にどーよ? 山本:もちろん! 久しぶり晴れたから屋上行こっか  ユウジの肩くらいの背丈の金髪で、ヒョロっとした体型なのが「山本」だ。ユカリは「山本」のリアルを知らないし、「山本」もユカリを知らない。それでも、一学期の初めにダンゴムシ集めで偶然知り合って以来妙に気が合って、クラスは違うがよくつるむようになった。  先頭を行く山本が屋上のドアを開けて「げ」と言う。 山本:場違い感がすごい、カップルだらけ ユウジ:あー、なるほど、そうきたか  屋上は広大な校庭を三百六十度見渡せて、遠くの山に海に畑に森にとさまざまな景観を楽しめる絶景スポットでもあるため、学生たちのデートによく利用される……ということを今さら思い出した二人。気まずい思いをしつつも、他の二人組からほどよく離れた空間を見つけて腰を下ろした。
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