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Act 2 ④ Falling Asleep
普段の倍以上の時間をかけて夕食を終えた。
アレックスは煙草を吹かしながら後片付けに入った。
カチャカチャと食器のぶつかる音。
水の流れる音。
聞き慣れていたはずの音なのに、自分で作っている音かと思うと妙に照れくさかった。
洗い桶に張ったお湯のなかに食器を入れ、両手を突っ込む。
食器洗剤が作り出す細かい泡が皮膚の表面で弾けて消えていく。
上の泡は温かいのに下のお湯は冷たく感じた。
(? 俺っていつからまともに食事するようになったんだっけ?)
今まで考えもしなかった疑問に彼は皿を洗う手を止めた。
(以前は食い物食わずに、酒だけで生きてたからなぁ…。と、するとローナが来てからか。うー、なんて健全な生活を続けているんだ、俺は。)
煙草の灰を流しの横においてあった灰皿に落とした。
含み笑いをしながら、紫煙を吸い込んだ。
(なんか、きっちり三食でさらに間食付きだもんなぁ~。寝てると叩き起こして無理矢理食わせるし、食事時にいないと怒るし…。)
思い当たる節を思い出しながら、少し顔をほころばせ、再び食器を洗い始めた。
5分ほどして食器を洗い終えた。
ふと、不審に思った。
片付けを始めてからずっと静かな彼女。
いつもならからかいの言葉でも来そうなのに、リアクションがないのだ。
食器を拭きながら後ろのソファに座っているローナに視線を向けた。
「おい、…!」
テーブルには飲みかけのコーヒーカップコーヒー。
彼女はそれに手を付けた様子さえない。
すやすやとソファーで眠っていた。
その姿にアレックスは一瞬驚いた。
お腹がいっぱいになったため眠くなったのだろう。
はじめはソファーのアームレストに頬杖をついていたのだろうが、今はそこに突っ伏して眠っていた。
彼は片付けの手を止め、フリルのエプロンを脱ぎ、反対側のソファーの背もたれに投げかけた。
「なーってばよ!」
「………zzz」
かなり大きな声で話かけるが、反応なしである。
腕を枕に眠っている彼女の顔をしゃがんで覗き込んだ。
「ローナ!こんなとこで寝ると風邪ひくぜ。」
ちょっと揺さぶってみたが、これまた反応なしである。
「寝るんなら、ちゃんと自分の部屋のベッド寝ろよっっ!」
「…や…ぁ~…zzz」
ようやくもそもそと動いたかと思うと、両腕でさらに顔を覆ってしまった。
まるで亀が甲羅に閉じこもるようだ。
「…『やー…』、じゃねぇ。ほら、しゃんとしろ!」
「やぁーーー… ここで寝るぅ~~~…仕事が遅いのは…自分の所為でしょ……私はちゃんと!ごはん…作ったもん。眠…い………手が痛いよ…」
「おい!言ってることに脈絡がねぇゾ、こらっ!!」
「アレッ…クスの…ば…かぁ……うにゃ…」
「しかし、俺に負けず劣らすと寝起きが悪いな…ローナ」
「私…は…悪く…ないもーんっ………ぐー…」
「…w…」
組んでいた腕を外し、握りこぶしをつくったかと思うとアレックスにめがけて反撃を開始した。
寝ぼけているとは思えないほど肩や胸に結構な力で当たっていた。
「わぁーった、わぁーった。悪くない悪くない。…ったく」
そう言うと両手を膝に置き、勢いをつけて立ち上がった。
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