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Act 2 ⑤ Clean the Table
反撃を続けることに疲れたのか彼女は仰向けになって静かに眠っていた。
「……う…ん………」
ちょっとその顔を眺めつつ、アレックスはため息をついた。
(黙って寝てりゃ、そこそこかわいいのにな…)
よくよく彼女の格好=トレーナーにジーンズという出立ちで眠る彼女の姿を見ながら半分安堵した。
彼女も曲がりなりにも女の端くれなのだとそう思った。
女性として意識することはほとんどないが、こうも無防備でいられるとこちらの方が妙に意識してしまう。
そんなことを考えながら困った顔で頭を掻いていた。
(何か変なことをしようものなら、あとでローナに何をされるかわからないからなぁ。)
灰皿が飛んでくるだけでは済まなさそうだ。
予想もしない物を持ち込んで、予想もしないことをしでかす。
いつものパターンだ。
クシュッ🤧
小さなくしゃみが聞こえた。
ブルッと身震いして身体を小さくした。
アレックスは目を丸くした。
「言わんこっちゃない」
彼はローナを軽々と抱きかかえるとリビングを横切って彼女の部屋へと向かった。
その腕のなかでローナは微かに意識を取り戻した。
(……あ……煙草の…におい…?ア…ル…?)
彼女の部屋の前に来るとドアを足で軽く押して、中に入っていった。
「!」
めったに彼女の部屋に入る事はないので、その状況に彼は目のやり場に困った。
(これだから女の子女の子の部屋は嫌なんだよ~ぉ)
暗いとはいえ朧げにわかるきちんと整理整頓された部屋。
パステルカラーをメインにレースやフリルのオンパレードである。
色やインテリアなど自分には絶対に合わないと思いながら一目散にベッドに向かった。(いかに自分の部屋が煙草と物に溢れ汚れているかがわかる…?)
アレックスはゆっくりと彼女をベッドにおろし、ブランケットをかけた。
「ん……」
しばらくすると彼女の寝息が一定のリズムで響いてきた。
それを確認して、彼はドアに向かった。
「おやすみ。」
そう言ってドアを閉めた。
廊下で壁に寄りかかると、胸ポケットから煙草を取り出して、火をつけた。
「意外と家事もやり慣れないと苦しいな…。」
独り言のように呟き、煙を吐き出した。
煙草をくわえたまま、気を取り直したように背伸びをした。
「さてっと、洗濯も残ってたんだっけな。気合いを入れてやるかっ!」
今日一日、専業主婦のアレックスであった。
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