祈り

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祈り

春に産まれた君は天使のようだった。 競走馬として生まれて来てしまった君は、 幼い頃から、ずっと早く走る事を強いられて、 生まれてすぐに立ち上がる君は、天才だと。 君は、天才と言われる事が嫌いだった。 僕の力は、天から与えらたのではないのだ。 自ら努力して頑張って来た結果なんだと。 走り続けていたから、急に止まれない。 今まで走り続けていたから考える暇がなかった。 立ち止まった君は、振り返り気付いてしまった。 走り続ける以外に、何の思い出もない。 僕は、活きてると言えるのだろうか? 皆の希望や夢を背負って、無我夢中に走り続けた。 やけに星が綺麗な夜空を見上げて呟いた。 空にはこんなに沢山の星が出ていたんだ。 空を見上げる余裕もなく、走って走って。 止まることは、許されなかった。 勝てば勝つだけレースの数は増えた。 そして、気付いてしまったのだ。 君には、翼があることを。 空に向かって、星に向かい。 疲れた脚の代わりの翼を広げたんだ。 今度は戻る時は、普通に生きたい。 誰の目も気にせずに、恋をするのも悪くない。 ゆっくりでいいから戻っておいで。 君のレースの映像を観ながら涙する。
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