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「あんたら人間でしょう?好きな時に好きなだけ動いて、好きな時に好きなだけ、自分が思い描いた感情を自由に言葉で声に出して表せるんでしょう?人間は繊細で傷つきやすい生き物だって自分たちが1番わかっているんじゃないの?それで人を傷つけて何になるの?嫉妬とか私にはそういうのわからないけど、そんなつまらない感情で自由に使える時間を誰かを苦しめるために使うなんてもったいなすぎる。せっかく自由に使える権利があるのに!時間は、言葉は、人を不幸にするために使うもんじゃない!もっと大切に使うべきだ…。」
目の前にいる不良たちは、私の言葉の意味を理解できているだろうか。
視界がぼやけてきて、そろそろ危ないと思った時、吐き捨てるような声が細く響いた。
「訳わかんねぇ。行くぞ。」
残り1分。
支離滅裂かもしれないが、なんとか最後まで言い切った。
私は息を切らして倒れ込んだ。
「真知!ありがとう。本当にありがとう。巻き込んでごめんね。」
意識が朦朧とする中、優里の声が柔らかく届く。
男たちは、いつのまにか退散していたようだ。
「私、アンドロイドなんだ。もうすぐ充電切れちゃうや。怖かったらそのまま置いていって良いよ。」
もう優里と話せなくなるかもしれない。
怖いと初めて思った。
そしてそんな感情が溢れた結果、つい言ってしまった。
でも、やっぱり優里は優しかった。
「そんなことない!こんな身体を張って助けてくれた親友を怖いなんて思うわけない!家まで送るから!充電すれば平気なんでしょ?また話せるんでしょ?」
「たぶん。充電全部切れたことないからわかんないや。データ全部飛んじゃったりして…。てか、受け入れるの早くない?」
「そんなこと言わないで!大丈夫!真知が私の親友なのは変わらないから!とりあえず私のモバイルバッテリーさしとくよ!タイプが同じで良かった。こんな感じで良い?」
「ありがとう…」
私は最初、介護に貢献するために開発された、ただの機械だった。
でも、介護に利用するためには、人間に寄り添うための感情が必要ということで、必要そうな感情だけ設定された。
それから、人間と限りなく同じ時間を共有できるようにと、食事ができるようにもしてもらった。
そして、実験的に学校に通い、人間との協調性を身につけた。
そこで優里と出会い、今に至る。
優里から、今までたくさんのことを学んで、だんだんと意思も芽生え、少しだけ人間に寄り添うという意味を理解できた気がした。
私も、時間を気にせずに動いて、ずっと話せるようになりたい。
もっと人の心を理解できるようになりたい。
もっと人の役に立てるようになりたい。
私には毎日命がけのタイムリミットがある。
まだまだ研究段階でバグも起きやすく、充電が全部切れたらデータが全て飛ぶ可能性のある、不完全な消耗品として生まれてきた。
つまり、優里との記憶が消える可能性と毎日隣り合わせ。
それがとても悔しくて仕方がない。
それでも、こんな友達を持てて幸せだと思いながら、私は意識を失った。
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