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12月は、レストランle cielの月に一度のイベント、スイーツコースとムニュ・デギュスタシオンを少し前倒しにし、その後のクリスマスの営業を乗り切った。
開店して初めての12月は予想を超えた忙しさだったこともあり、年末年始は長めの休みを取ることになった。
年越しの時期はお互い実家に帰ることにしていたが、その前に一度閑から食事に誘われていた。
フレンチレストランでディナーをとり、その後は僕が時折行くバーに閑と二人で飲みに行き、閑が予約していたホテルに二人で入った。
うちよりも高級な価格帯のレストランで、サービスも料理も洗練されていて、いい一日を過ごした気分で一杯だった。
部屋に入ると、ホテルの広いベッドに、無言で押し倒された。
別にそれで構わなかった。
今日、二人で過ごす間、言葉の端で、視線で、わずかな指先の触れあいで、今晩二人でどうやって過ごすのか、もう十分すぎるほど確かめ合っていたから。
でも、いい時間だったと、そう思っていたのは、僕だけだったのだろうか。
「の、どか……?」
先程の閑の声と、いじめる、という言葉がかみ合わなくて、聞き間違いだったのではと思いそうになる。
でも、
「ん?」
優しい目で僕を見つめた閑の行動で、聞き間違いでなかったことを悟る。
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