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ほとんど着衣の乱れていなかった閑が、ネクタイをほどいて引き抜いた。
僕の手をとって手首の内側に口づけると、もう片方の手と一緒に、僕の手首をネクタイで縛り上げた。
「ちょっ……なに」
「えー、言ったじゃんいじめるって」
「だから、なんで……」
閑の手がまだとまっていたシャツのボタンを外すと、インナーの中に手を潜り込ませる。胸の粒を指の腹で優しく撫でられて眉が寄る。
「……んっ」
先ほどからもどかしい刺激を絶えず与えられて、焦れた僕は身をよじる。その動きでネクタイが手首に食い込んだ。
「わかんないんだ? 隼人のそゆとこ、俺好きだけどね」
胸に触れる指が押しつぶしてこねるような動きに変わって、息を詰める。
「隼人、お前さ、結構人目引くんだよ」
「……?」
詰めていた息を吐いて、閑を見上げる。
――人目を引く? 僕が?
僕は地味でぱっとしない人間だ。
フレンチレストランのメートル・ドテル(給仕長)という仕事柄、清潔感や服装に気をつけてはいるが、閑に何でそう言われるのかわからない。
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