#ネクタイと執心

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「今日、すげー妬いた。なんかレストランで女の人に見られてたし」  閑の足が僕の膝を割って、膝頭で下肢を擦る。それも、ひどく緩慢な動きで、やるせなさに眉が寄る。 「……の、どかだろ。う、ぁ、見られて、たのは」 「レストランだけじゃないよ。 バーでもお前、なんか知り合いとかいう男にべたべたさせたでしょ」 「普通に、た、だの……知り合い、あっあ、あ」  急に強く擦られて体が跳ねる。 「肩とか腰とか触られてた」  バーで、以前マスターを通して知り合った会社員の男性とたまたま会い、久々なので親しく接されただけだ。  閑だってそのときは普通にしていたのに。 「でも、知らない人じゃないし、あのくらい……」  そう言うと、閑の眉根が寄った。 「俺は知らない人だし、知ってる人でも駄目だよ、 あんなベタベタしたりされたら」  閑が、片手で僕の頬に触れた。 「あのさ、隼人。 お前って、いいんだよ。すげーいい。 立ち方も、歩き方も、動きも、きれいなの。 会話だって、仕事で慣れてるじゃん」  仕事柄気をつけている部分ではあるけれど、閑の欲目が十分すぎるほど含まれていると思う。 「だから、今日はいじめたい。 ……こんなことしても許してくれるんだって、 俺は特別なんだって、確かめさせて?」  その言葉に答えることはしなかったけれど、無意識に、期待するように喉が鳴った。
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