ミルメーク

4/5
前へ
/5ページ
次へ
その後も輪の中で話に興じていた惣太は、しばらくして、会場の隅に座っている智子の元へやって来た。 「吉川さんは今どうしてるん? まだ地元におるん?」 「うん、まだ地元にいてる。仕事で神戸まで通ってて」 ビールをひと口飲んだあと、惣太が言った。 「小学校の給食の時、吉川さん一度、俊一たちを叱ったん、覚えてる?」 智子は遠い記憶を呼び戻した。 「あっ……確かそんなこと、あったね。ミルメークの出た日で……」 「そう、ミルメークの出た日。吉川さんは、僕が俊一たちに苛められてると思ってたようだけど、実は、違うんや」 「えっ」 「僕の家、すごい貧乏で、お菓子も全く買ってもらえないほどお金に困ってたんや。だから、ミルメークやデザートの出る日は、俊一たちが自分たちの分をんや」 智子は驚いて惣太を見つめた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加