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「怜さんは、優しい……から」  俺じゃなくても。 「優しいっていうか、優柔不断よ。後で困るくらいならもっとビシッと断ればいいのよ」  沙雪はふん、と鼻息荒く辛口な評価をくだした。  透瑠は沙雪に合わせて乾いた笑いを漏らしながら、遠くの怜をみていた。言い寄る女性陣に囲まれて困ったような顔に見えるが、本心はどうなんだろう。 「あ、の……やっぱり、今日はやめときます。おかず買っちゃったし……」 「そっか、残念。また改めて打ち上げしようね!」  沙雪に手を振って、自宅へとまた歩き出す。  自分と怜の間に何か、なんて。あるわけない。  いつもはゆっくり歩く帰り道を、早足で通り過ぎる。夕焼けが透瑠の影を長く伸ばす。影が透瑠を闇へ引きずりこもうとする気がして、怖くなった。  アパートの階段を全速力で上り、ドアを乱暴に開けて乱暴に閉める。  はあはあと荒い呼吸をしながら、ずるずるとその場に座り込んだ。  怜は優しい。  優しくされると、勘違いしてしまう。自分だけだって、特別なんだって。 『透瑠くんと……一緒にいても、いい……?』
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