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体を打つ雨粒の冷たい感触で、彼女は目を覚ました。よほどの距離を吹き飛ばされたのか、あるいはその前に敵から無我夢中で逃げるうちに離れてしまったのか、巣穴のある森はずいぶんと遠くに見えた。
いや、森だった場所と言うべきだろうか。
星が降ってきた時に火が燃え移ったのか、森はすっかり焼失し、焦げた木の残骸がちらほらと立つだけになっていたのだ。
幸いにして、降り注ぐ雨によって火そのものは既に消えたようだった。
彼女は、焼け跡に向けて走った。
子供達が待つはずの巣穴を探すが、目印となっていたものはことごとく焼失し、木が焦げた臭いのせいで鼻に頼ることもできない。それでも彼女は、しばらく焼け跡をさまよい歩いた末、子供達を見つけ出すことができた。
いや、これについても、子供達だったものと言うべきなのかもしれない。
彼女が見つけたのは、四つの炭化した死骸だった。一番小さい一匹は、燃え尽きて死骸すら残らなかったのかもしれない。どのみち、ここにいたのなら助からなかっただろう。
彼女は、かつての我が家を去った。森が焼けてしまった以上、もうここでは虫も木の実も採れない。新たな住処を見つけなくてはならなかった。
ここに戻ってくることは、恐らく二度と無いだろう。
焼け跡を出ようとしたところで、彼女はかつての敵を見つけた。苦しそうに長い首を反り返らせた敵もまた、黒焦げの死体となっていた。その周囲には、敵とよく似た姿をした、小さな死体がいくつも転がっていた。敵もまた、子供を育てていたのだ。
ここで死んでいる敵が、あの時に彼女を捕えたのと同じ個体であるかまでは分からない。しかしもしかすると、あの時に彼女を放り出していった敵は、降ってきた星に驚いて逃げ出したのではなく、我が子を守るため巣に戻ろうとしていたのかもしれなかった。
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