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星が降ってきた夜
彼女にとって、満天の星が輝く夜は、危険に満ちた時間帯だった。
彼女の生きる世界において、真の強者は日中に活動している。
牙だけでも彼女の体を凌ぐほどの大きさがあるそれらの強者達は、しかし彼女のような小動物には興味を示さなかった。獲物としては小さすぎ、捕まえるのに苦労するだけで、食べたところで腹はろくに膨れないからだ。
故に、強者同士の争いに巻き込まれて踏み潰されたりしないよう気をつけてさえいれば、彼女にとって昼間はそこまで危険な時間帯ではなかったのだ。
むしろ、本当に怖ろしいのは夜の方だった。
真の強者達が寝静まった頃、それらを怖れて日中は身を潜めていた、より小さなもの達が蠢きだす。
小さなと言っても、それはあくまでも真の強者達と比べての話だ。そうしたもの達にも、彼女を一呑みにできるくらいの大きさはあった。
それらは大きな目で夜の闇を見通し、彼女のような小動物を見つけては鋭い鉤爪のついた足で押さえつけて捕え、時には丸呑みにし、また時には引きちぎって食べた。彼女にとってつがいの相手だったオスも、そうして命を落としたのだ。
そんな危険に満ちた夜間に行動することはできるだけ避けたかったが、そうも言っていられない事情が彼女にはあった。
五匹いる彼女の子供達は、乳離れできる程度には育っていたものの、自力で餌を取ってこられるほど大人でもなかった。つがいの片割れを失った彼女は、一匹きりで子供達を育てあげるため、餌となる昆虫の動きが活発になる夜間も活動せざるを得なかったのだ。
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