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駿にはわからない。
なぜ大人は、時間に関してあまりにもいい加減すぎるのか。
あと五分が本当に五分ですんだ試しなどほとんどないのに、「あと五分」を繰り返すのか。
ウソになるとわかっていて言っているのか。
それとも、毎回本気で五分ですむと思い込んでいるのか。
思い込んでいるのだとしたら、それは少し怖いことのような気がする。
五分というのがどれくらいの時間なのか、大人になるとわからなくなってしまうのだろうか。
暑いはずの炎天下で、背中を今までのものとは違う冷たい汗が流れ落ちた。
駿はおそるおそる母にたずねた。
「バスまだ?」
母は腕時計もスマートフォンも見ずに答えた。
「あと五分よ」
〈完〉
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