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一応、
『名前 右腕スーパーパンチャー
攻撃力 90
防御力 60
必殺技 右腕スーパーパンチ
・発動までの時間がかかる
・このときだけ、攻撃力が300
弱点 パワータイプだから、スピードが遅い』
っていうところまでは書いた。
だけど、決めゼリフがぜんぜん思いつかない。
いちおう、「おれに右腕を使わせるな」とか「ほんとは左利きなんだがな」とか考えてみたけど、なんかハマってない気がする。
「うーん」
小さく唸ってペンを回すと、
「勝てそう?」
って、となりの清水杏子が、先生にバレないよう前を向きながら言った。
「負けるかも」
「いま何勝何敗だっけ?」
「一勝四敗」
おれの勝率に、清水がちいさく噴き出す。
そりゃそうだ。この戦い、ミヤオが圧倒的に有利なんだから。
この戦いが始まったのは、いま大人気の少年アクションマンガ『三日月と金属バット』の話をミヤオとしたことがきっかけだった。
その話のなかで、ミヤオが「まあ、おれのほうがもっとかっこいいキャラ作れるけどな」って言った。ミヤオは、具体的にどういうことしてるのかは分からないけど、いちおう漫画家を目指してるから、おれが「そんなわけないだろ」って返したのがムカついたみたいで、「じゃあ、勝負な」って、オリキャラ対決することになった。
で、始めてから気がついたんだけど、けっきょくジャッジはミヤオだったから、ぜんぜん勝てなかった。
ミヤオが言うには、「お前のキャラ、いつも名前がダサイ。あと、決めゼリフからキャラクターの背景が見えてこない」んだそうで、「お前だってそんな変わんねえじゃん」っておれはあんま納得いかなかったけど、たしかにいつもダサイっちゃダサイ。
だけど、一勝だけしてる。
で、それは清水のおかげだった。
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