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あと1分
「トイレにでも入っとく?」
「え、なんで?」
「トイレって狭いじゃん。狭い空間を4本の柱で支えてるから、家ん中じゃトイレが一番安全って、ばあちゃんが言ってた」
「最期の瞬間をトイレで迎えんのかよ?」
「……なんかそれ、嫌だな」
「……」
「……」
「……なんかさ」
「ん?」
「時間経つの、遅くね? 2分きったあたりから、すげえ遅い気がする」
「ああ、そうな、確かに。1分めっちゃ長え」
「どうする、なんか、暴露話でもする?」
「それすげえ興味あんけど、あっという間に時間経っちゃいそうだな」
「やめとくか」
「そうね」
「……」
「……」
「"蛍の光"でも歌う?」
「やめろよシャレんなんねえ」
「……」
「……」
「あと30秒くらい……?」
「だな……」
「……」
「……」
「怖えな」
「震えてんのかよ?」
「しょうがないじゃん」
「うん、俺も怖え」
「……」
「……」
「いい人生だった?」
「ああ……たぶん。いろんな事あったけど、プラマイゼロって感じ。今だって、おまえいるし。おまえと抱き合ってて落ち着くって、やべぇよな」
「生き残ったら付き合おっか」
「えっ──」
「ウソだよ、バーカ」
「おまえなあ……」
「あと10秒」
「……バカ話で終わったな」
「いいじゃん、俺ららしくて。つうか泣くなよ」
「おまえこそ泣くなよ」
「……」
「おまえはどうよ?」
「え?」
「いい人生だった?」
「……俺は───」
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