空の宝石箱

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「星はどうしてキラキラ光るの?」 夜空を彩る星を見ながらユウが言った。どうして光るんだっけ?星の正体はガスで、ガスが燃えているから光るんだっけ?でもガスが燃えたら爆発するよな。星が爆発するのをビックバンって言うんだっけ? 頭の中で星やら惑星やらがグルグルとまわった。いくら考えても分かるわけがない。小学生の頃から理科は苦手だった。 「どうしてだと思う?」 困ったときはそう聞き返すことにしている。ユウの考える力を育てられるだけでなく、親が考えなくて済むから便利なのだ。 「えっと」 一生懸命に考えている。4歳になったばかりのユウには難しいかもしれない。 「えっとね、お空はとってもお金持ちなの。」 「お金持ち?」 意外な言葉が出てきたので思わず聞き返してしまった。 「そう、お金持ちなの。太陽と月はね、宝石を売っているの。」 ユウの話はこうだ。 お空はとってもお金持ち。毎日大好きな宝石を眺めて楽しんでいる。どこかの国の王様みたい。 太陽と月はお空を喜ばせようと色々な宝石を持ってくる。 お空は太陽の運んでくる宝石がお気に入り。お空が喜ぶから昼はキラキラ眩しくてポカポカと暖かい。 月が運んでくる宝石はあまり好きじゃないみたい。お空の機嫌が悪いから夜はひんやり冷たくてしんと静かでとっても暗い。 ある日、月は宝石がたくさん入った箱を持ってきた。お空は箱の中をチラッとのぞいた後、真っ逆さまにひっくり返した。宝石はあちこちに散らばった。 でもね、その宝石がキラキラキラキラ光るからたくさんの人が宝石の美しさを知ることができたんだ。地球に住んでいるぼくたちはそれを「ほし」って呼ぶんだよ。 一生懸命に話し終えたユウはどこか誇らしげだった。月の明かりに照らされて空からの使いのように見えた。 「ステキだね。ママもお空の宝石、ひとつ欲しいなぁ。」 「うん、大人になったら月にお願いするね。ママにプレゼントしてあげる。」 ユウの言葉に胸がじんわり暖かくなる。優しいユウ。美しい話をありがとう。 キラキラ輝く星空の下、私とユウは手を繋いで家へ帰った。
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