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『お兄ちゃん久しぶり! 今は宇宙にいるんだよね! 人生に一度は宇宙を見てみたいけど、私は絶対行けないだろうから、感想とかよろしくね
( `・ω・´)ノ !
P.S.想像しやすいように細っっかくね!』
最近18歳の誕生日を迎えた満月から、メールが届いていた。
すぐさま『了解』と返すと、同僚がパソコンを覗き込んできた。
「お、何だ何だ? 彼女か?」
「違う、妹。高校生。先に言っとくけど狙うなよ?」
「まだ何も言ってねーよ!」
同僚の冷やかしを軽く流す。
僕は今、月にいる。宇宙飛行士として月面を調べるためだ。
高校で進路に迷っていた頃、幼い頃の不思議な体験を思い出した。そして今度は自分で宇宙に行きたい、と思って宇宙飛行士になったのだ。
宇宙船での生活も少し慣れてきた。無重力空間での食事は最初は不便に感じたが、今ではお手の物だ。
ふと、いつしか出会った星の精霊を思い出す。宇宙のどこかにいるとは言っていたけど、果てしない世界のどこかだ。きっともう会うこともないだろう。
でも、彼女と出会えたこと、そして彼女が見せてくれたものを、忘れることはないだろう。
「──おい流生! 見てみろよ、めっちゃ綺麗だぞ!」
先ほどの同僚が、宇宙船の窓を指して叫ぶ。その声につられて、周りの先輩も窓を覗いていた。
先輩が窓から離れるのを見計らって、おそるおそる窓を覗き込む。
そこで僕が目にしたのは。
「──ああ、」
そこには、壮大な青が。
真っ青でも水色でもなく、空色でも、瑠璃色でもなく。
全てを含んだような地球色が、宇宙の闇の中を照らしていた。
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