秋の成人祭

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 午後4時。成人祭が始まってから1時間も過ぎれば慣れない伝統衣装もだいぶ肌に馴染んでいた。  西日に照らされ広場の脇にある稲達が鮮やかに揺れる。空にはオレンジと薄い紫色が綺麗なグラデーションを織り成し幻想的な景色を作り上げていた。  さすがに風は冷たいが、広場はみんなの笑顔が集まりご馳走や談笑を楽しむという、とても暖かな時が流れていた。 「蒼希!やっぱ白髪似合うなぁ~!大弌さんそっっっくりだな~!」  みんなに注がれた酒を端から飲み干していく桜将が真っ赤な顔で僕の頭をわしゃわしゃしてくる。  僕らは広場に作られた舞台の長テーブルに三人並んで座っていた。  僕をまん中に挟んで、左が心花で右が桜将。桜将の絡む相手は必然的に僕になるというわけだ。 「桜将、飲み過ぎだよ!そのくらいにしておきなって!」 「おまえは飲みがたらね~ぞ~!」 「あ、リリアちゃんだ!」 「はっ!?リリア!!?」  リリアちゃんの事は全くの嘘だが、途端に真っ赤だったはずの桜将の顔が青くなる。 「ううぅぅぅ、おぇっ、なんかきもちわりぃ~…」 「ほらっ!言わんこっちゃない!」 「桜将くん、大丈夫~?」 「お、お姉さまっ…」  心花の横にいて話をしていたお姉さんが素早く桜将の横に移動する。 「吐いたら楽になるから、ちょっと行こうか?」 「お姉さま~優しい~!」 「リリアの未来の旦那さまだからね、大事にしとかなきゃね~!」    桜将は一人前に稼げるようになったらリリアちゃんを迎えに行くらしい。てっきりあのまま結婚でもするのかと思っていたけどリリアちゃん曰く「まだ早い」らしい。
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