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僕は『ご苦労様、アース』と囁いてアースドラゴンを自分の中に収める。
アースは、生まれつき僕の中に棲んでいてお願いすると出てきてくれる。そういう存在。家族を含め村中を探しても、こんな特殊な体質は僕だけらしい。
ゆっくり目を開くと福の神に戻ったおばちゃんが満面の笑みで「本当にありがとう」と貯金箱を抱えていた。
この村では皆が家族のようなもので助け合いは当然なのだ。それがこの円村のとても良い所である。
「蒼希、ありがとな!…ところでよ」
「うん?」
突然おじちゃんが目をニヤリとさせて僕の肩をぽんぽんと叩いてくる。
「心花とは?どうなったよ?」
唐突な質問に顔が引きつり、体が熱くなるのを感じた。
心花は十歳の頃にこの村へ引っ越してきた同い年の女の子。
彼女の長いミルクティーみたいな色の髪はいつもシャンプーのいい香りがして、僕は心花の髪が香るたびに胸の奥が跳ね上がっていた。
…でも、どうしておじちゃんが知っているんだ…!
「な、なんのこと…」
「とぼけんな。好きなんだろ?風の噂で聞いたぞ」
おじちゃんは僕の肩をがしっと掴み顔を寄せてくる。噂を立てた風とやらを責めたくて仕方がない。
「あはは、蒼ちゃん真っ赤っか!」
「な、、夏だからっ」
自分でも顔が赤くなっているのが分かる。
「僕、戻らないとっ!!」
「おー!がんばれや!色々となぁ!!」
この村では皆が家族のようなもので、誰が誰を好きとかいう話などはあっという間に広まる。本人の耳に入るのも時間の問題だろう。
それがこの円村の、少し厄介なところである。
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