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君が、大好き
ぼくの家族になった人間は、ぼくにとても優しい。
車に乗せられたときは、ぼくは置いていかれるって思ってた。
でもぼくにひもを付けて、ぼくの行くところに一緒に来てくれる。
振り向いたらいないんじゃないかって心配になって振り向くと、優しい笑顔で二人で話しながらぼくを呼ぶ。
信じていいの?
ぼくには1つだけ気になってる事があるんだ。
時々、家族になった人間の1人がぼくを優しく抱き締めて、涙を流してお話してくれる。
その時の声色から、その人の深い後悔と悲しみ、そんな感情が伝わってくるんだ。
ごめんねって。
ぼくを見ると思い出すんだって。
ぼくと似てるから。
ある日、この人が赤ちゃんを産んだ。
いっぱい泣いて元気な赤ちゃんだよ。ちょっぴり甘えん坊かな。
ぼくはお兄ちゃんだから、この子を守ってやるんだ!
泣くとすごくうるさくて、変な顔してるけど、ミルクの匂いがしてすごく愛おしいんだ。
この人のママが来た。
なんだか聞き覚えのある声。
この人はきっと、ぼくの事がキライだろう。
ぼくはこっそり自分の部屋に戻った。
「あら、犬を飼ったの?赤ちゃんが産まれたんだから、この犬をなんとかしなくちゃね。何か菌を持ってたら大変よ!」
「お母さんやめてよ!犬は話せなくても言葉が分かるのよ。お母さんのせいで私はずっと悔やんでる。ころんは私がちゃんと愛情を持って最後まで育てるんだから!
お母さんには知っておいてほしい事があるわ。」
そう言って、ぼくと車に乗ってお出かけした時の絵をテレビに繋げてママに見せた。
ぼくは嬉しさいっぱいで走っていた。坂を転がり落ちて、ビックリして甘えに行ったこと、
「こわかったね~」
と優しく撫でてもらったらまた走り出して、何度も振り向いていたこと、ママがそれらを見て言った。
「あんな、ごめんなさいね。ずっと苦しんでいたのね。あなたが幼い頃、勝手に捨ててきてしまったころんの事を言ってるんでしょう。犬ってこんなに感情を持っていたのね。私はお爺ちゃんから、犬は畜生だって言われていたから、あなたが欲しがったとき飼うことが心配だったの。あなたに何かあったら……と思って。」
あんな?この人あんなって言うの?
ぼくは全て思い出したんだ。
頭の中に絵が浮かぶように。
あんなはぼくを見つけてくれたんだね。
ずっとぼくの事を想ってくれてたんだね。
あれほど後悔していたんだね。
ぼくの名前はころん。
あの時と同じ名前だった。
あんな―!!ぼくだよ!あの時のころんだよ。会いたかったよ、ずっと。
ぼくはあんなに優しく抱っこされている。幸せだよ!
ぼくは、君が大好き!!
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