君の人生に警護で好う(5)

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 個人の休憩室に入るなり、畳の上へと横たわる颯京様。ずっと現場では笑顔を絶やさない状態で、気を張っていたのだろう。  マネージャーは、事務所からの連絡が入り外で電話をしている。 「お疲れ様です」  颯京様を目に追うのが仕事。親切心ながら秋吉は、労る気持ちでお水を入れた紙コップを渡した。  先程まで横たわっていた颯京様は、起き上がると紙コップを受け取る。 「今回の映画で、‪Ω‬役で良かったんですか?」  警護をする者としては仕事外だけれども、ふと聞いてみた。‪Ω‬の男性ではないか、と疑われているのならば、余計にしない方がいいと思う。  別に、と小さく呟いた颯京様は、今までの愚痴が零れ落ちそうになる。紙コップをテーブル上に置いた後に頭が下を向く。 「‪Ω‬役ってさ、大体あんなのばっかなんだろうなぁ・・・・・・‪α‬やβ(ベータ)の男性は良いよな? 子供が出来ない身体で。僕は、この身体が嫌いだ。低い地位だろうが、何度も来る発情期なんてどうでもいい。あの映画の奴みたく妊娠させようとする輩が大っ嫌いだ!」  今までの気持ちが溢れ出す。誰にも想いは届かない。颯京様は、唾を飛ぶ勢いで荒々しく乱暴な言葉を吐いた。  感情を落ち着かせようと、颯京様の身体に手を伸ばすけれど手で払われる。  颯京様が払った手の体温は、氷のようにひんやりしていた。今の言動も合わされば、冷え切ったコーヒーのようだ。
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