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とある日の早朝の事。
警護人は、颯京様のマンションである玄関先に立ち尽くす。
事務所から借りた車と共にーーー
「もうすぐ六時。そろそろか」
颯京様との約束の時刻は午前六時。颯京様の自宅のマンションで待機している警護人兼ボディーガード。その人物こそが秋吉努である。
シャツの袖先から腕時計をすり抜いて、着々と動く時計の針。六時を目安に車のドアノブに移動をする。
「おはよう。例の薬あるならくれ」
「はい、かしこまりました」
時間通りに現れた颯京様は、口を大きく開けて欠伸をする。真っ直ぐに秋吉を見つめて手を伸ばした。
颯京様の言う通りに透かさず『例の薬』を与える。『例の薬』とは、Ωの男性である発情期で必須の品物だ。即効性を持ち合わせている抑制薬。
秋吉から手渡された薬を颯京様は手に取り、口に薬を放り込んだ。即効性のお陰で颯京様の身体が段々と和らいでいるよう見える。
最初の颯京様は、身体を揺らしながら車まで来たのだから。
「楽になりましたか?」
「嗚呼。さぁ、行こう」
人目で見れば颯京様の身体への変化が分かるのに、わざと秋吉は颯京様の体調を聞いてみた。
先程と違い身体が軽くなったようで素早く動いた颯京様。口を開いた後に車のドアを開ける。
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