君の人生に警護で好う(3)

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 警護の初日。  午前九時にて相手の事務所へと出向く。秋吉はΩの男性の警護をするというのが仕事だ。  しかも警護の対象者は、人気であろうΩの俳優。颯京様。  秋吉は俳優自体、初めての職業柄だ。相手にどういう印象を取るか取られるかの心配で表情筋を隠せない。  ボディーガードたるもの、表情筋は使わない中でひたすらと警護の対象者を守り抜く者だ。警護会社に入社した際、教育係の男性に言われた。  教育係の男性が言う通りに表情を引き締める為に、秋吉は両手で頬を叩いた。自分自身に気合いを入れる。  事務所へと入り、事務所の方に警護会社の人間だと認知させる。事務所の方に言われるがまま、真正面のエレベーターに乗った。  最上階にある部屋へと勧められて事務所の方にお礼を言う。頭を下げて立ち去る事務所の方。  部屋へと入る前にドアを腕の甲で数回だけ軽く叩いた。誰か居るかの確認も忘れずに相手からの返事を待つ。 「はい、どうぞ」  ようやく部屋の中に居る相手から返答が来た。部屋のドアノブを触り、後ろの方に引いた。  部屋を開けるなり、周りの状況を確認した上で先に挨拶する。 「初めまして、颯京様。秋吉努と申します。本日から三ヶ月間の間、警護を任されて来ました。どうぞ宜しくお願い致します」  警護の対象者には礼儀正しく失礼のないように振る舞う。  これもボディーガードとしての役目だ。 「ふぅ〜ん、君が僕の警護を担当するのか。こちらこそ宜しく」  黒色のスーツ姿を着ている秋吉に対して、颯京様は物珍しそうに眺める。警護される側ならではの反応であった。  立場では対象者の下であるからして、多少のタメ口は許せる。宜しく、と礼儀をちゃんと言える俳優とは悪くない。  そう対象者を品定めながら性格や存在感を知る事になった。
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