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浩二とサヤカはニッコリ笑った。
テーブル上、それぞれの前には専用の皿があり、こんがり焼かれた鮎が、一匹ずつ乗っている。
「この鮎は、このへんの川の上質な苔を食べてますから、脂がのっていて、よく太えているので美味しいですよ」
「本当に美味しそう……」
仲居の言葉に浩二は気さくに答えた。
「こんな鮎の塩焼き、見たことないです」
サヤカも同様に言った。
そして笑顔のまま酒を一口飲み、
「やっぱり和食には日本酒ですよねー」
それを見た浩二は、少し不機嫌に、
「あんまり飲み過ぎると、せっかくの鮎の味が分からなくなるぞ」
「それは大丈夫。あたしは強い方だから」
「それでも早くお召し上がりください。美味しく食べていただくことが、鮎の供養にもなりますから」
「はい、いただきます」
その言い方に、思わず笑いながら、浩二も酒を一口飲んだ。
仲居は、さらにた味噌汁を出し、小ぶりの茶碗に白ご飯をよそうと、
「どうぞ、ごゆっくり……」
軽く会釈して、部屋を出て行った。
若い男女の関係に、よけいな話をしなかったのだろう。
二人は、今の仲居の心中を推測して、ニヤリと笑った。
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