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「遠藤いとです、どうぞお見知り置きを」
「あ、ああ……」
全く雲雀は何を考えているのか。見る限り十代半ばの少年にこんな女装をさせて。
「拾ったんだよ、新宿でね。あれは新年会のあった夜だった、ここ三ヶ月、君が来ない間にいいものを見つけてしまったのだよ。もう、君もさっさと遊びに来れば良かったのに」
「それは仕事が忙しくて……いや、この子はどこの子なんですか。この家に置いている場合じゃなく早々に自宅に帰すべきでしょう」
「自宅はないって」
「ない……?」
いとは俯いて何も語らなかった。調子に乗った雲雀はケラケラと笑い、ブランデーを一気に飲み干す。
「連れて帰ると良い、潤一郎」
「え……」
「君の描いたいとが見たい」
いとはやはり何も言う様子はない、連れて帰るも何もこれは最悪誘拐事件にも相当する。自宅がないのならせめて然るべきところに、しかし潤一郎の視線を感じたいとは静かに眉を寄せて顔を上げた。
「水無月先生、どうかお側に」
「は、何を……」
「モデルでも下働きでも構いません。どうか私を使ってください」
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