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 俺は鷹城を見つめたまま、それ以上何も言わなかった。冷や汗をかき始めてしまい目を逸らす。鷹城に背を向け、座ってスニーカーを履いた。 「怒ってないのか、宇野」 「何?」 「俺のこと。あんだけ色々、好き勝手やったのに」  俺は立ち上がり鷹城に向き直って、言った。 「怒ってるよ、でもバイトは店長の恩情で続けられてるし……」 「そうかよ……」  鷹城はそう呟いてじっとこちらを見ていたが、しばらくして目を逸らし、いつもの口調に戻った。 「あのな、だいたい夏休みの予約つったら、普通二、三ヶ月前には」 「言い訳だけど……、ここ最近はいろいろ悩んでたんだ。鷹城とのこともあったし」  鷹城は微かにため息をついた。 「わかったよ、どっか探してやるから。日付は?」 「28、29なんだけど……。でも、さすがに身内でも無理なんじゃ」 「任せとけって」 「ありがとう!! 助かる! ……あ、でも割増料金とか、かかっちゃうかな」 「俺の友達ってことにするから」 「ありがとう」  俺は大雑把に抱きついてみせた。すぐ離れようとしたが、鷹城の右手が一瞬で背にまわっていた。 「じゃあ、ほんとありがとう……。俺も帰って勉強するから」  そう言って腰を引いたが、鷹城の腕は緩まない。 「かぶってる分あるだろ。うちでやってけば」 「俺、ノート中心で勉強するから……、自分のじゃないと」  一人暮らしの家に入ったのだから、この事態は想像しないでもなかった。  しかし、鷹城は反省しているようだったし、次々と俺の言うことを聞いてくれたので、油断してしまった。抱きついたのはやりすぎだった。おだてればもっと優遇してくれるのではと欲が出た。  鷹城は急に顔を逸らした。コップを置く場所を探しているのだとわかった。  俺は腕から逃れようと力を込める。それに気づいた鷹城が姿勢を崩したと思ったら、冷たい感触が胸元に広がる。氷が、コン、コンと床に落ちていった。コップは割れなかった。  白に英字がプリントされた俺のTシャツは、泥水をぶちまけたような色に染まっていた。 「ああ……」  思わずそう漏らす。近所の量販店で三枚二千円で買ったTシャツだったから、それほど怒りはない。 「わ……悪い」 「いいよ、安いやつだから。なんか服貸して」  そう言いながら、紐をゆるめ靴を脱いで廊下に上がった。 「おう……、その前に、シャワー浴びるだろ」 「ん? いや、……適当に拭けばそれでいいよ。別に寄るとこないし」 「それ、首とか……ベタベタするだろ、こっち」  強引に手首を掴まれ、サッと血の気が引いた。これではまるで、いつもと同じだ。 「鷹城」  脱衣所の壁に押し付けられる。鷹城は首筋にキスをしたあと、Tシャツの上から思いきり乳首を吸ってきた。 「ちょっ……!」  その胸を吸い上げる感触に、驚くほど感じてしまっていた。思わず息を呑んだ。  自分の身体がまるで別物のように感じる。よくよく考えれば、以前は定期的にこうやって愛撫を受けていたのだから、変化があっても仕方ないのかもしれない。それにしても……。  力が抜け、いつのまにか床へ座り込んでしまう。 「……帰る、から」  鷹城はTシャツ越しに何度も吸い付いてくる。あいているほうの乳首も指先で弄っている。その感触が懐かしくて、気持よくて……。そこを弄られた分だけ、気持ちがどんどん淫猥になっていくのだった。頭の中では勝手にその先を想像し、期待してしまう。  しかしわずかに残っている理性が、早くここから逃げろと急かしていた。  胸から鷹城の頭をなんとか退かし、立ち上がって脱衣所から出ようとする。  後ろから鷹城が抱きしめてきた。 「一緒に浴びようぜ」 「いい、帰るよ」 「俺のこと、心配してくれたんだろ。……結構、嬉しかった」  腹のあたりからTシャツに手を突っ込まれた。太い人差し指が、乳首の先端をゆっくりと撫でる。快感に身を震わせる。もう何もかも忘れて身を委ねてしまいたいくらいに、鷹城の指先が好きだった。 「鷹城、帰るっ……から」 「もう勃ってるじゃねーか、仕方ねぇやつだな」  楽しげにそう言い、左手で大きく股間をまさぐる。 「やめ……」 「手とフェラと、どっちがいい?」  鷹城は、耳へ吹きこむように喋る。 「俺、帰る…」 「指で、中、かき回されたい?」 「全部、やだ……」 「じゃあこれどうすんだよ、自分で扱いて帰るか? あ、俺見ててやるから」 「やだって言ってんだろ! 離せよもう!」  怒鳴って思いきり、鷹城の脛を蹴りつける。俺はその隙に逃げ出した。しかし玄関で靴がうまく履けない。サンダルで来れば良かった……。もたもたしているうちに背後から強く腕を掴まれる。 「わかった。……もうそろそろ俺のチンコ、突っ込んでほしいのか? ベッドもあるし、ちょうど良かったな」
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