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 子供のように声を上げ、嗚咽を漏らし鼻をすする。  自分でも途中から、何に対して泣いているのかわからなくなる。  非道な鷹城に対してかそれとも、一人でこの家を訪ねてしまった浅はかな自分自身にか……。  遠慮がちに声をかけてくる鷹城を、しばらく無視していた。  そのうち、背中にタオルケットのようなものがふんわりと掛けられた。それでも俺は枕に伏したまま、泣き続けていた。  目が覚めると……、部屋は薄暗かった。  俺の上にはちゃんと掛け布団があって、枕元に畳んだ服が置いてある。その向こうに水のペットボトルを見つけ、手を伸ばした。喉が乾いていた。  半分ほど飲んでキャップを閉める。そのタイミングで部屋のドアがあいた。 「起きた? あのさ、水置いといたから……、あ、飲んだんだ」  俺は手に持っていたペットボトルを、そのまま鷹城に投げつけた。  頭まで布団をかぶった。鷹城の寝具は……なぜかいい匂いがする。  矛盾を感じながら、俺は子供のように丸まっていた。 「宇野……ほんと、ごめん」  その声を無視して強く目を閉じる。しばらくうとうとして、ようやく布団から顔を出すと、部屋には電気がついていた。壁の時計を見れば、もう九時になる。  俺は枕元の衣服を身に付けると、何も言わずにリビングへ出た。  鷹城はソファに座っていた。ソファ前のローテーブルに俺のトートバックが置いてあったので、ひったくるように持つ。 「宇野」  鷹城が後ろから付いてくる。俺は出来る限り低い声で言った。 「俺達、旅行はたぶんどっか行くけど……。まだ決めてない。さっきの予約係とかの話……、全部嘘だから」 「そっか。そうじゃないかなと思った……。あのさ、ほんと俺が悪かったから……、宇野」  思わず振り返った。 「そんなの当たり前だろ! 俺、いくら反省したって言われても、トイレでのこと、絶対許さない。女とヤりまくって、飽きたから俺なんだろ。ほんとに最低だし」 「違うって……、好きなんだ」  俺は持っていたトートバッグを鷹城に投げつけていた。チャックが無いタイプなので、中の小物がバラバラと床に飛散した。 「ほんとだって」 「……好きとかいうくせに、俺の気持ち、一度も考えたことないんだろ」 「考えて……」 「俺が身体触られてる時、どんな気持ちかなんて……考えないだろ。嫌いな男に、触られてキスされて、指突っ込まれて……。勃起してるっていうけど……相手がおまえじゃなくても、あんなことされれば、勃つから」 「宇野、ごめん」 「そんなんで好きとか、よく……言えるよな。好きなんじゃなくて……気に入らない俺を、からかって、苛めて、自分が気持ちよくなりたいだけだろ……」  鷹城の顔は見ずに、玄関から外へ出る。背後でまだ何か聞こえたが、無視してドアを閉めた。  一刻も早くここから去りたい。歩調を速めた。  マンションから歩道に出たところで、財布以外の全てを鷹城に投げつけたままだと気づいた。
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