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6
「嫌だ……」
「やれよ」
「……なんだよ。何がしたいんだよ。悪かったよ無視して」
「ぐだぐだ言ってないで、早くやれよ」
「嫌だって」
「別に、もっとおまえが嫌がることで、済ませてもいいけど。例えば……」
「クズ。学校に言いたいなら言えば。鷹城のことだって言ってやるから」
「まぁ……、注意くらいだろ。俺はそのくらいなんでもないけど……。宇野は困るんじゃないの? 奨学金もらってるんだし……。ああ、他のバイトも禁止になっちまうかもな」
一体どうやって調べたんだろう。すべて鷹城の言うとおりだった。強気になってはったりを言ってみたが、バレバレだったようだ。
「いいのか? ……いろいろ、すげー面倒だろうな」
鷹城は重ねてそう言う。確かに謝罪だとか説明、手続き……そういうものを考えただけでうんざりした。
もう一度、鷹城に目を向ける。
これが終われば、気が済むだろうか。
「もう、俺に付きまとうの……、今日で終わりにしてくれよ。だったら、してもいい」
「付きまとう?」
鷹城は不思議そうに繰り返した。
「あっそ。わかったよ……まあ、じゃあそれでいい。今日で終わりだ。ちゃんと最後までイかせろよ」
そう聞いて俺は覚悟を決めた。
床に膝をつくと、顔は鷹城の腰と同じ高さになる。
雄は下着から外に出ていた。そばに寄るまでよく見えなかったが、鷹城のそれは、なぜか既に勃起していた。すごい角度で反り返っている。かなり立派で、俺はまたわずかな劣等感を感じながらも、なんとか雄に触れる。中途半端なことをやると、また文句をつけられるかもしれない。
俺は目標に口を近づけながら、ぎゅっと目を閉じた。味だとか……匂いだとかのことは、できるだけ思考から消そうと努力する。
死にそうとまでは言わないが、気分は最悪だった。
鷹城の雄は大きくて、うまく口に含めなかった。それでもなんとか慣れようと頑張っているのに、鷹城が頭に触ってきて気が散る。
手は側頭部を撫で、時折耳をくすぐってくる。もったいぶった触り方をするので、なかなか集中できなかった。
「触るな」
そう言って手を払ったが、またすぐに頭を掴まれる。今度はやや乱暴だった。
「もっとちゃんとやれよ」
鷹城がいきなり雄を押し込んでくる。俺は驚いてむせる。顔を離した。
何か気管に入ってしまったのか、咳が止まらなかった。口を押さえ、横を向く。
「おい……大丈夫か」
なぜか気遣うような声が聞こえ、俺は頭に疑問符を浮かべながらも、なんとか息を整えた。
「鷹城、動くなよ。驚くだろ」
またすぐに腰の前へ顔を戻した。気を取り直して、再び雄を口に含む。
もう俺は、半ばやけくそになっていた。途中でやめたら次も同じことを強要されるかもしれない。それよりは今日済ませてしまったほうが、ずっと良い。
「ん、……ん」
口と手を精一杯動かし、できるだけ間をあけないようにして続けた。もう頭は触ってこなかったので、いくらかマシだった。
やがて鷹城は達した。
俺はすぐに顔を離したもののタイミングが悪く、口の中、それと頬に少し精液がかかってしまった。無言で鷹城をドアの前から退かせ、個室を出る。急いで洗面台の蛇口をひねった。口をゆすぎ、顔を洗い終わって水気を拭っている頃、個室ドアの開閉音がする。
振り返ると、鷹城が出てきていた。衣服は整っている。なぜかやけに神妙な面持ちだった。
「宇野。俺……、実は」
「ちゃんと約束は守れよ。もう二度と話しかけてくるな」
冷めた口調でそう言って、俺はトイレから外に出た。
週明けの月曜、信じがたいことに本校舎の玄関で、鷹城と鉢合わせた。どうやら待ち伏せされていた。無視して前を通り過ぎようとするが、声を掛けられる。
「宇野、ちょっといい?」
俺は歩みを止めなかった。
「おい」
腕を掴まれたので、大きく振り払う。
「約束はちゃんと、守れよ」
「あの、ほんと悪かったからさ……、ちょっと来てくんない?」
鷹城が向かった先は、先週と同じ旧講堂だった。やはりトイレに向かっている。嫌な予感しかしないので、途中で踵を返した。
「おい宇野」
手首を掴まれると、頭に血がのぼる。
謝罪でもしてくれるかと思っていたのに、期待はずれだった。
「触るな」
鷹城はふいに顔を近づけてきて、気づいた時にはキスされていた。
人はいないが広い廊下だ。どこからでも見える。
「鷹城、やめ……」
俺が離れようとすると、今度は乱暴に二の腕をつかむ。壁際に追い詰められ、今度は舌まで入ってきた。何度も肩を叩く。
顔を離した鷹城は無表情で言った。
「俺はここでしてもいいけど」
「は……」
「困るのは宇野のほうだろ。……来いよ」
そう言って鷹城は、先に歩いて行ってしまう。
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