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「ほら、いいから入れって」
「ちょっと今は無理!」
そう文句を言ったが、鷹城はぐいぐいと身体を寄せてくる。トイレの個室に押し込まれてしまった。
「何度も言うけど、バイトなんだって……。行かなきゃ。次、遅刻したらクビになる」
「居酒屋だっけ? やめちまえよ、ちょうどいい」
「勝手なことっ……!」
「あんまり騒ぐと、誰か来るぞ。……俺はそのほうがいいけど」
そう言って薄ら笑いを浮かべる鷹城は、俺の腰を強引に抱き寄せる。
便器に腰掛けた鷹城。その上に横向きに座らされた。何度か立ち上がろうともがくが、鷹城は決して手を緩めない。俺は身体が思い通りにならないことが悔しく、涙で目が霞んだ。気づかれたくないので、咄嗟に俯く。
またか……。
今日はめずらしく殊勝な態度だったから、ついに改心したのかと思っていた。けれど結局こうなるのか……。
鷹城はなんの運動をやっているのか知らないが、しっかり筋肉があり、ついでに背もある。俺より十センチは高いだろう。こうやって押し込められると、鷹城が満足するまで出られないのはわかっていた。
抱きしめられ、いつものように強引に唇を奪われる。シャツをめくられ、唇が胸に触れる。明るい栗色の前髪も、同時に肌をくすぐった。
思わず身を震わせた。最初はくすぐったいと思うだけだったこの行為も、繰り返されるうちに、すっかり身体が感じるようになっていた。もう何度目だろう、わからない。
「あ……」
鷹城の唇は片方の乳首を、丁寧に嬲っていく。ちゅうちゅうと吸い、舌先で舐めまわす。
「や、やだ……、なあ頼むから、今日は帰らせて。頼む」
最初の頃ように、雄を扱かれて終わりなら短時間で済むし、まだ良かった。いつからか鷹城は、こうやって乳首を弄くるのを楽しむようになっていたのだ。
いつも三十分以上かかってしまうし、トイレを出る頃にはクタクタになっているので、たまったものではない。
「やだって……」
「こんなにここ固くして……、嫌じゃないだろ」
「あっ、だめ」
勝手な鷹城だったが、なぜか、こちらが本当に痛くて不快なことはしないのだった。その手前ぎりぎりのところで引き返す。だからどうしても、殴ってやろうだとかそんな気にはなれなかった。
「ん……」
鷹城の顔を見るたび、今度こそはちゃんと話をつけようと思う。なのに、いつも途中から本気で気持ちよくなり、我を忘れてしまう。
「ん、あ……、もう」
それからずいぶん長い間、乳首への愛撫が続く。どのくらいか分からなくなるほど繰り返され、頭は靄がかかったようにぼんやりしてきて、息は落ち着いてくる。
「やっぱすげーエロいわ……、おまえのここ……」
もう何度も聞いた言葉だった。するたびに言われると、本当にそうなんじゃないかとさえ思えてくる。
「ほんと、きれいなピンクだしさ。明るいとこでやりてぇ」
「ん、んっ、あ……っ」
「もっと声だして」
「出せるわけないだろっ、こんな場所で」
「え……、場所がちゃんとしてればいいのか?」
「とにかく……、トイレは最悪」
「じゃあ今度俺んち来て。なんならラブホでもいいし」
「は?」
意味がわからず問い返そうとする。それを遮るように鷹城は体勢を変える。今度は、背が鷹城の胸に触れる。
既に半勃ちになっていた俺の雄は、軽く扱かれただけで完全に勃起した。さんざん胸に愛撫を受けたせいなのか、先走りの液もこぼれている。
後ろから大きく胸板を撫でられ、やがて、両乳首をくりくりと勢いよく弄られる。指先で摘んだり、転がしたり、または下から上へ押しつぶすように、ふにふにと擦られる。腰のあたりが熱く疼いて、どうしようもない。
「や、あ、ぁっ…… だめ、それ」
「すげぇ感じてるくせに。腰揺れてるぞ」
「ばかっ……!」
「なぁ、どう触られるのが一番好きなんだよ。いいようにしてやるよ……」
耳元でそう囁かれて、なぜか頬が熱くなった。
「うる……さい」
「じゃあほら、キス……。こうやって乳首弄られながら、エロいキスすんの、好きだろ……」
横から唇を奪われそうになる。咄嗟に顔をそむけた。
「好きじゃな……、い」
「上も下も、こんなビンビンにおったてといて、よく言うよな。このままだと、また乳首だけでイっちまうんじゃねーの?」
「や、ちが……っ」
「ったく強情だな」
今度はかなり強引に顔が寄ってきた。逃げきれず深く口付けられ、舌が入ってくる。
咥内をくまなく探られ、上顎をゆるゆるとなぞられる。
その頃にはもう、俺の理性はかけらほどしか残っていなかった。
鷹城の舌が、快感を与えてくれる大切なもののように思えてしまい、自分からも積極的に舌を絡めていた。変わらず乳首は愛撫され続けている。鷹城の指先がとても気持ちいいということだけは事実で、どうしても逃れようとは思えなかった。
「んっ、んあっ………あ」
「気持ちいいか……?」
言いながら鷹城は、指先を小刻みに激しく動かしてくる。気持よさに、たまらず仰け反り、鷹城の腕を強く握ってしまった。
「や、も、それっ……、だめ、変に、なるっ……」
「今日も乳首でイくのか? 男のくせに、恥ずかしいやつだな」
「や、やぁ! だめ……」
「ほら、イけよ」
「ん、やぁ、あっ………!」
大きく身体が震える。雄だけを扱かれてする射精の快感とは、また違う何かが……、どくどくと内から溢れ出るように、身体を包んだ。全身の力が抜け、大きく息をしながら、思わず背後の鷹城にもたれかかってしまう。しばらくして興奮が収まってきたので、腕時計に目をやると、すでに五時十五分になっていた。
「クビだ……」
うなだれ呟いたその背後で、鷹城は俺の肩に顔を埋め、自分の雄を扱いていた。あっというまに達したようだった。
もう一度腕時計を見る。大きくため息をついた。
家から近くシフト調整もしやすいという、良いバイト先だったのに……。
あと一回だけと言って遅刻を許してくれた店長の顔を思い出す。
俺は、いつのまにか目頭が熱くなっていた。信頼を裏切ったのだから、クビは当たり前だ。
わかっている。わかっているが……。こんな理不尽なことがあるだろうか。友人でもない男の為に、なぜ……。
始末をして服装を整えたが、俺は自分が情けなくて、悔しくてたまらなかった。自分の性欲を呪った。このままでは身の破滅だ。
俯いていると背後から、からかいを含んだ明るい声が聴こえた。
「お、めずらしく泣いてんの?」
俺は思いきり拳を握って、鷹城の頬を殴りつけていた。
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