ピンチヒッター

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 一方的に告げられて、承諾したわけでもないのに、連れ出されてしまった。  陽の光が、窓越しに見るよりも一層 鮮明に映る。  鉄棒を使っての筋力トレーニング。まずは斜め懸垂を五分、それから逆上がりをするらしい。  揃いのユニフォームを着た少年たちが、鉄棒を前に一列に並ぶ。 「よぉし、もう後五分だ! 」  号令が響く度、ぼくの体は真っ逆さまにさせられる。  まったく。体の中身が全部ひっくり返ってしまうじゃないか……まあ、いいんだけどね。  五分が経過した。  力を使い果たしたからってわけじゃないけれど、声を出すことは出来なかった。  こちらへ目を向けた岩戸が 「もう五分経ったか」と呟いて、終了を告げた。
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