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館山駅前、観光案内所の周辺
今日久々に健太さんと会えるんだ………
薄い化粧と唇にリップを塗った大人びた由紀乃が健太を待っていた。コートを着ている由紀乃は携帯電話の時計を見て
待ち合わせ時間5分前 健太さん、時間まで来てくれるのかな………あと5分で健太さんに………
携帯電話と言ってもスマホとは違いガラケーと言うやつだ。電話をかける受ける、メールを出す受ける、まだまだそれだけしか出来ない代物だった。この時代携帯電話がやっと普及し始め、まだまだ携帯電話の電波の範囲が今とは違い電波の届く範囲が狭かった。
お互いに忙しくて中々会えない日々が続いて電話やメールで会話はしてたけど、やっぱり会えないと寂しいな………
由紀乃は今度はバスのロータリーにあった時計を眺め
あと5分か………こんな時の5分って何だか遅く感じる………
内房線の電車が到着したのか、数人の人達が駅の外の階段をまばらに降りて来た。ふと夜空を見上げると白い物が舞っていた。
雪だ、寒いはずだよね。雪が降ってきた………
パサ………
えっ………
後ろから誰かが私の首にマフラーを巻いて………って、
『待たせちゃったみたいでごめんな………』
由紀乃が振り向いた先には健太が立っていた。
『健太さん………』
健太は由紀乃の表情を見て笑いながら
『せっかく会えたんだからそんな顔するなよ。』
由紀乃は泣いてしまい
『健太さんと会えるのが久しぶりなんですもん………』
健太は自分の両手で由紀乃の両手を掴み
『なかなか会えなくてごめん………今日は朝まで一緒に居ようよ。手が冷たいな。大丈夫か………?』
由紀乃は自分の両手を健太に掴まれながら
『ありがとうございます。朝までずっと一緒に居たいです。あの、腕を組んで一緒に歩いてくれませんか………?』
健太は由紀乃に腕を出すと由紀乃は顔を真っ赤にし、照れながら健太の腕に自分の腕を絡めた。
『それじゃ行こうか………』
由紀乃は照れながら幸せそうな表情で
『はい、行きましょう。健太さん、あったか〜い………』
二人はこのまま雪が舞っている館山市の繁華街に消えて行った。
ただ、二人の周辺だけは不思議と暖かく見えた………
〜完〜
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